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平渡友理 / 1994年生まれ。大学、大学院では建築学を専攻した。世界中の伝統的建造物、伝統工芸がすき。

悩んだってしょうがない、のか

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夫の口癖は、「悩んだってしょうがない」だ。

そんな夫に悩みを尋ねてみると、

「友理が東京から戻ってこないこと」と言った。そして、

「とはいえ友理の配属は、俺が悩んでもどうすることもできへんからなあ。」

と力なく笑った。たしかに、どうすることもできないことを悩んでもしょうがない、というのは理にかなった意見である。

 

私たち夫婦はお互いの仕事の都合で、入籍当初から、東京と大阪で遠距離結婚をしている。同じ場所に住んでから入籍することも考えたが、どうせ結婚するしと、遠距離恋愛のまま入籍した。

「とにかく普通の夫婦生活を送ってみたい。家に帰ったら友理がいて、夜ごはんを食べながら二人でテレビを見るような、そんなどこにでもある暮らしに憧れる。」

考えてみると、私も夫も大学進学を機に親元を離れてから、もう何年もそんな当たり前の家庭生活を送っていない。実家にいた頃は閉塞感すら感じていた「平凡」な暮らしが、いつの間にか贅沢品になってしまった。

「とにかく、友理が近くにいてくれるだけで俺は幸せやで。」

夫は冗談めかして話すが、その目は真剣だった。

 

夫とは5年近く交際しているが、学生だったこともあり、その間1度も同棲したことはなかった。初めてデートをした日から今日に至るまで、毎回デートが終わるたびに、「ずっと一緒にいられたらいいのに」と、寂しく思う。遠距離恋愛が始まってからは、特に強くそう感じるようになった。

でもこのデートのたびにこみ上げてくる寂しさが、好きという気持ちを1番生々しく感じられる瞬間だったりもする。一緒にいる時はただただ笑って過ごしていても、お別れがくるたびに、共に過ごす時間が決して当たり前のものではないということを痛いほどに突きつけられ、胸がきゅっと締め付けられるのだ。

 

もしも私が大阪配属だったら、どうだったのだろう。しあわせを噛みしめつつも、世界のどこにでもある、ありきたりで少し退屈な暮らしだと感じていたかもしれない。それがどれだけ恵まれたことなのか、そしてお互いがどれだけ大切な存在なのかということを、二人とも今ほど意識することはなかっただろう。

悩みは、順風満帆なときには見過ごしてしまうような自分の奥深くに眠る気持ちと、落ち着いて対話できる貴重な機会なのだと思う。そしてそんな気持ちとしっかり向き合うことで、自分にとって本当に大切なものに気がつくことができるのだと思う。

 

夫は、悩んだってしょうがないと言う。しかし私は、どうすることもできなくとも、悩み、すなわち自分から湧き上がる素直な感情と向き合う行為には、そんな大きな力があると思う。この遠距離結婚の時間が、わたしたちの今後の結婚生活を、より豊かなものにしてくれると信じている。

 

 

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